世話人代表挨拶

世話人代表 淺井 仁:金沢大学

 

 前任の奈良勲氏から世話人代表を引き継ぎました淺井仁と申します。私自身はまだまだ発展途上であり、奈良氏のように物事を大局的に捉えることができませんが、本研究会での活動を通して、物事を大局的にしかも多角的に掌握できるきっかけなればと切望しています。

 本研究会のフォーラム(討論会)は、第1回目が2019年2月9日に神戸大学医学部保健学科を会場にして開催されましたが、その後はコロナ感染のこともあり年に2回のペースでZoomによって開催されています。その記念すべき初回のテーマは「なぜ、理学療法と哲学・倫理学なのか」でした。このテーマは本研究会の究極の目的であり、保健・医療・福祉領域の一翼を担う私たちセラピストが、治療技術を基盤にしながらも、人間である対象者とセラピストがより親密な信頼関係を築くために常に考えるべき課題だと思います。「哲学」というと、多くの人びとは近寄りがたい特異的なイメージを抱くかもしれません。私も以前はその1人でした。

 今から35年ほど前に奈良氏を学会長として第19回日本理学療法士学会が、金沢市で開催された際に、当時、明治大学教授の哲学者中村雄二郎氏が特別講演に招聘されました。その時の講演内容は詳細に覚えてはいませんが、「哲学は日常的社会生活の深層に潜む現象である」とのことだったと思います。

 現在、私は哲学とは「トコトン考えること」と理解しています。私たちは教育・臨床・研究を通してさまざまな事実を追究していますが、その際にそれぞれの活動の真髄を問い続け、よりよい方法論と帰結を求めています。これらの活動は究極的には、対象者に対して最善の保健・医療・福祉を提供するためでしょう。つまり、皆さんは対象者のあらゆる可能性を最大限に高め社会参加を支援するために、信頼関係を築くと同時に検査・測定/評価に基づいた予後予測について熟慮し理学療法を実施し、その帰結から治療内容を再考しながら仕事をされていると思います。

 本研究会は私的で小さな組織です。従いまして、形式にとらわれることなく、自由な発言・討論が可能です。何も疑問に思わなかったことも異なった視点、新たな観点から考えることができるようになり世界観が広がるかもしれません。本研究会のフォーラムに参加していただき、皆様の哲学・倫理学的な考えを活発に交換していただき、対象者へのより望ましい社会参加を支援する方法を追い求め続けることを願っております。

 

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